血液凝固・線溶検査は、血液を固めたり、溶かしたりする働きを調べる検査です。
血液凝固異常が疑われる動物に対して、原因を調べるために、また外科手術前のスクリーニング検査として行われます。
血液を用いて、止血に関する血液凝固因子が十分に足りているか、止血異常がどの段階で起きているのかを調べます。
具体的には、先天性の凝固因子欠乏症(血友病、フォン・ヴィルブランド病など)の検索、DICの診断・治療・治療効果のモニタリングなどです。
ちなみに。。人間のO型血液の人は、フォン・ヴィルブランド因子が他の血液型に比べて20〜30%少ないらしいです。
道理で、私は血がなかなか止まり難くて、いつの間にか膝のあたりに青あざや赤あざができていることがよくあります。💦 納得しました。😌
1次止血:血小板血栓形成による止血
2次止血:1次止血を補強するように凝固系が作用して、フィブリン血栓(血餅)を形成するまで
内因系凝固:血管内に存在する凝固因子によって起こる反応
外因系凝固:血管外に存在する組織トロンボプラスチンに由来する反応
<検査項目>
凝固系)2次止血異常の検出目的
●フィブリノゲン(Ⅰ因子)
フィブリンの前駆体で肝臓で産生され、感染症や悪性腫瘍による炎症によっても上昇する
●PT(プロトロンビン時間)
外因系と共通系の凝固因子の欠乏や異常で延長する
複合性凝固障害(肝障害、ビタミンK欠乏、DICなど)で延長する
●APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
内因系と共通系の凝固因子の欠乏や異常で延長する
複合性凝固障害(肝障害、ビタミンK欠乏、DICなど)で延長する
先天性疾患(血友病A・B、フォン・ヴィルブランド病)または抗凝固因子抗体、抗リン脂質抗体の存在下で延長する
●AT(アンチトロンビン)
トロンビンは、フィブリノゲンをフィブリンに変化させて血液凝固を促進する
アンチトロンビンはトロンビンと結合して血液凝固を抑制する
AT↓(人で70%以下、犬で85%以下)では(低分子)ヘパリンは無効なので、輸血後に使用すること
ちなみに、抗凝固剤としてのヘパリンは、それ自体に抗凝固作用はなく、アンチトロンビンと結合することでその抗凝固作用を増強させ、血液凝固を阻害する。
ヘパリン起因性血小板減少症は、ヘパリン投与後に自己抗体が産生され、凝固亢進→血小板減少+血栓形成となるので注意が必要です。
●TAT(トロンビン・アンチトロンビン複合体)
トロンビンとアンチトロンビンが1:1結合した複合体で、ATとともに、DICの比較的感度の高い検査項目
TAT↑は凝固活性化状態で、DICでは、AT↓、TAT↑となる
正常ならDICを除外可能
DICの診断基準を満たしても、TATが正常であれば診断を見直す必要がある
TATの評価が、DICに対する治療効果の判定に最も有効
線溶系)
1次線溶:血栓形成する前の、フィブリノゲンがプラスミンによって分解される
2次線溶:フィブリンがプラスミンによって分解され、形成された血栓を溶解する
●FDP(フィブリノゲン・フィブリン分解産物)
FDPは、1次線溶でも2次線溶でも増加する
DICでは、TATよりも遅れて上昇する
●D-ダイマー(安定化フィブリン分解産物)
2次線溶のみで増加するため、前提として血栓形成があり、それに続く線溶の指標
血栓形成の感度が高いが、特異度は低い
DIC診断基準項目:ただし、全て満たせば確実に予後不良
①血小板数↓ :凝固亢進による消費
ただし、肝臓機能障害(トロンボポイエチン産生低下)など他の原因でも低下
②PT延長(外因系):凝固亢進による凝固因子の消費
ただし、多くはDICの末期(凝固不全)になって延長するので早期診断に不向き
③APTT延長(内因系):凝固亢進による凝固因子の消費
ただし、多くはDICの末期(凝固不全)になって延長するので早期診断に不向き
④フィブリノゲン↓ :線溶亢進による消費
ただし、炎症性疾患ではDICでも上昇する
⑤FDP、D-dimer↑ :線溶亢進の結果
ただし、線溶抑制型DICではFDP上昇は軽度または上昇なし 胸水腹水でも上昇
⑥AT活性↓ :凝固抑制のためトロンビンと結合して消費
ただし、ATはTに対してかなり過剰に存在し、DIC以外の病態で低下することの方が多い
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※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。