学生時代から、私はこの分野が苦手でわかりやすく説明することができません。😓
なので、今回はとてもお話が難解です。
すみません、先にお詫びいたします。😥
播種性血管内凝固症候群 (DIC)は、Disseminated Intravascular Coagulation の日本語訳です。
けれど、Death Is Coming の略でもあると言われていて、死に至る、死に直結する、とても危険な病態です。
DICは、原因となる基礎疾患の重症化によって引き起こされ、全身の細い血管内に血栓ができ、その結果、2次的に出血が止まり難くなる合併症です。
血液を固める凝固作用と、できた血餅(血栓)を溶かす線維素溶解(線溶)作用が同時に、全身に無秩序に起こるために、とても治療の難しい病態です。
本来は、出血の起きた障害部位でだけ生じるはずの血液凝固反応が、全身の微小血管内で無秩序に起きるのがDICです。ルール違反です。
血栓のせいで血管が詰まり(梗塞)、その先の組織が壊死することによって、脳や腎臓、肝臓、心臓、肺などで重篤な障害が起こります。(多臓器不全)
また、出血が止まらなくなることで大量出血を招いたり、血栓による重要な臓器障害も加わるので、外科手術時に回避しなければならない危険なリスクです。
一般的な擦り傷や切り傷などの出血が起きたときは、障害部位の血管の収縮作用とともに、血液中の血小板がそこに集まってきて凝集塊(血小板血栓)を作り、とりあえず傷口を塞ぎます。(1次止血)
その後、血液凝固因子(Ⅰ~ⅩⅢ因子、Ⅵは欠番)が次々に活性化され、最後にフィブリノゲンが不溶性のフィブリンに変化して、丈夫なフィブリン血栓(血餅)が形成されます。(2次止血)
その後に線溶反応によって、無駄な部分の血餅を溶かして(線溶系)、血管の障害部位が整えられます。
DICでは、血液凝固亢進状態から続く線溶反応の程度によって、線溶抑制型と線溶亢進型に分類されます。
①線溶抑制型DIC(FDP微増or正常):敗血症 で多い
②線溶亢進型DIC(FDP著増):白血病
③線溶均衡型DIC(中間型):固形がん
犬では、線溶亢進型のDICは少ないと言われています。
原因疾患)
臓器の重度の炎症(急性膵炎、肝不全、クッシング症候群など)、悪性腫瘍(リンパ腫、白血病、血管肉腫、乳腺癌など)、細菌による敗血症(子宮蓄膿症など)、溶血性疾患、重度広範囲の組織損傷(やけど、凍傷、熱中症、外科手術)など
悪性腫瘍では、腫瘍細胞の表面に凝固反応を開始させる組織因子が現れて、全身の微小血管内に血栓が生じます。
重度の細菌感染症では、感染が全身の血管や組織に広がったとき、グラム陰性細菌が出す内毒素(エンドトキシン)の働きによって凝固反応が始まります。
第1段階:血液凝固系が亢進し、全身の血管の微小血栓→多臓器障害
第2段階:止血異常(多量出血)
その時体内では、過剰な凝固反応を抑えるために、凝固抑制因子であるアンチトロンビン(AT)がトロンビン(T)に結合して(TAT)中和を行います。
また、できた血栓を溶かすためにプラスミンが活発に働くようになります。
これらの反応が同時多発的に、全身の血管や組織で繰り広げられます。
パラドクスが身体中のあちらこちらで起きるために、ややこしくてこんがらがった状態になってしまうのです。
①血栓の元になる血小板やその他の凝固因子が、ムダに大量に消費されて不足するために、出血しやすくなる
②(血液凝固抑制のために使用された)アンチトロンビンの不足によって、凝固反応が進行し血栓形成が進む
③プラスミンの働きにより、本来出血を止めるために作られた血栓まで溶かしてしまい、出血傾向が強まる
具体的な症状)
皮膚の紫斑、鼻出血、口腔内出血、呼吸困難、血尿、吐血、下血、意識障害(脳梗塞・出血)、止血困難、多臓器不全、死亡
予後の悪い、死亡率の高い、正直絶望的な病態ですので、DICになりかけている段階での早期診断、早期治療につきます。
基礎疾患を早期発見・早期治療することによって、DICにさせないことが重要です。
治療は、できるだけ早く
①基礎疾患の治療
②抗凝固療法
③補充療法(全血・血漿輸血)
④合成蛋白分解酵素阻害薬の投与 を行うこと。
例えば子宮蓄膿症では、手術による病変部の摘出が必要ですが、病態によっては術前からDICの治療が必要なこともあり、手術時期の決定や手術そのものが難しい場合もあります。
検査:血液検査、凝固系検査、基礎疾患の検査
予後:DIC=Death Is Coming 難しいです。
DICは、高い確率で死亡原因になっているはずなのですが、死因として目や耳にすることはまずありません。多臓器不全や、〜性ショックというのは見聞きしますけどね。
きっと、説明が難しくて面倒だからだと私は思っています。🤨
以上、面倒なお話をここまで読んでいただきましてありがとうございました。
動物たちの健康管理の参考にしていただけましたら幸いです。😊
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※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。