診察の基本は、問診と視診や触診などの身体一般検査です
ですが、ワンちゃんも猫ちゃんも、言葉で痛みや苦しみを私たちに教えてくれません
言葉の話せない動物たちに代わって、検査の結果はたくさんの役にたつ情報を私たちに知らせてくれます
ここでは主な検査の種類とその目的、意義について説明させていただきます
血液は遠心分離をすると、下に沈んだ血球(有形)成分と上澄みの液体成分に別れます
血球成分(赤血球、白血球、血小板)の数や大きさ、種類を機械で調べるのが血球計算(CBC)です
液体成分(血漿)の中に含まれている、様々な成分の濃度を機械で調べるのが血液化学検査です
🌟血球計算(CBC): 貧血、脱水、感染の有無、止血の具合がわかります
🌟血液化学検査: 肝臓、腎臓、膵臓などの各臓器と、全身に異常や疾患がないかがわかります
私たちの病院では院内の検査機械を使用して、15分くらいのお時間で34項目の検査が可能です
その子によって必要な検査項目は異なりますので、事前に料金を含めた十分な説明をいたします
なお当日はお水を飲んでも構いませんが、朝食を抜いていただくのがベストです
⚠️食後の検査は、項目によっては再検査が必要になる可能性があります
🌟院内で可能な他の血液検査
血液塗抹(とまつ)検査、フィラリア抗原検査、ウイルス検査(猫)、血液型検査(猫)など
🌟外部委託の血液検査(当院で採血後に検査機関へ検体を送ります)
内分泌(ホルモン)検査、血液凝固検査、免疫学検査、感染症検査、フィラリア抗体検査、ワクチン抗体価検査、血中薬物検査、遺伝子検査など
・・・併せてお読みください:オプション検査
尿は腎臓で、血液から体に必要な成分を取り除き、不要な物質を加えて作られた液体です
そのため体の状態を反映していて、本来ないはずの成分が含まれていたら、それは異常です
尿は長時間保存によって、アンモニアが発生して結晶も作られてしまいます
冷蔵保存をされますと、色々な結晶が析出することもあり、誤って判断される可能性があります
なので、検査をする尿は当日の朝採取されたものを午前中にお持ちいただくのがベストです
もし尿が取れなかった時は、病院で採尿することも可能です
🌟尿試験紙:少量の尿で検査可能です
尿比重、pH、白血球、細菌、タンパク、ブドウ糖、潜血、ケトン体、ウロビリノーゲン、ビリルビン ・・・併せてお読みください:尿検査
🌟尿沈渣の顕微鏡検査:10㎖以上
尿路結石の結晶や血球成分、細胞成分、細菌、寄生虫卵の有無を調べます
🌟UPC(尿中タンパク/クレアチニン比)
🌟UAC(尿中微量アルブミン/クレアチニン比):3㎖の尿量が必要です
尿蛋白(アルブミン)を検出して、慢性腎臓病の病期分類に役立てます
UPCは細菌感染、血液混入や腎臓病以外の病気で、UACは血液混入で上昇する可能性がありますので、2つを同時に測定して判断することが望ましいです
犬や猫は生まれつきだったり(母子感染)、寄生虫卵に汚染された土やミミズ、昆虫、カエルなどの生物を食べることによって寄生虫の感染を受けます
🌟直接法:糞便を薄く引き伸ばして顕微鏡で寄生虫卵などを調べます
🌟浮遊法:特殊な溶液を使用して寄生虫卵の検出率を高めます
その他、下痢の原因となっている細菌類、原虫類、潜血の有無、消化状態を調べます ・・・併せてお読みください:糞便検査
皮膚病の原因は、感染症、アレルギー性疾患、角化症、内分泌疾患、代謝性疾患、免疫介在性疾患、色素性(遺伝性)疾患、腫瘍、その他に分けられます
実際には、それらの複数の原因が同時に関わっていたりするのでより複雑です
原因によって治療法が異なりますので、特に慢性化した皮膚病の原因を知るためには、様々な検査が必要となります
🌟セロテープ検査
皮膚の表面に貼り付けてマラセチアや、ノミ糞、ツメダニ、シラミなどの寄生虫を検出するために行います
🌟真菌培養、ウッド灯、被毛検査
真菌(カビ)感染の有無を調べます
🌟抜毛検査
被毛の毛幹異常、毛周期などを調べます
🌟掻爬(そうは)検査
皮膚に寄生する目に見えないダニ(ヒゼンダニ、ニキビダニ、ツメダニなど)の有無を調べたり、皮膚組織の表層を採取後染色して顕微鏡検査を行います
🌟スタンプ検査
ジクジクした皮膚病変などにスライドグラスを押し付けて細胞を採取後、染色して顕微鏡検査を行います
🌟FNA検査
皮膚にできたイボなどから注射針で細胞を少量採取して染色後、顕微鏡検査を行います
🌟組織病理検査
できるだけ多くの場所から小さな皮膚組織を採取し、専門の検査所で検査していただきます
🌟血液一般検査、内分泌検査、免疫学検査
皮膚に影響する異常が無いかを調べます
最適な抗菌剤を知るための検査です
🌟培養検査
細菌や真菌の同定(犯人探し)を行います
🌟アレルギー(特異的IgE抗体)検査
ダニ、カビ、虫、花粉、食物のアレルゲンに対するアレルギーの有無を調べる検査です
食物アレルギーの有無を調べるために、最低2ヶ月間特別な処方食とお水のみで過ごしていただき、その後以前の食事に戻した時の皮膚の反応を観察します
犬の食物アレルギーでは、IgEよりもリンパ球が関わっている場合が多いことがわかっていて、この検査によってリンパ球が反応する食物と反応しない食物を知ることができます
その子の状態により必要な検査は異なりますので事前に料金を含めた十分な説明を行います
骨折や脱臼など骨や関節の異常を調べたり、胸部や腹部の内臓の大きさやその位置関係から、外観からではわからない体の内部の状態を知ることができます
さらにバリウムによる消化管造影や各種の尿路造影を行うことで、より詳しい情報を得ることができます
レントゲン検査の画像は影絵で内臓の大きさや位置関係、全体像をざっくりと知ることができます
それに対して、超音波検査はレントゲン検査ではわからない各臓器(心臓、肝臓(胆嚢)、脾臓、腎臓、副腎、妊娠子宮、膀胱、消化管など)やリンパ節、腫瘍の内部の様子や、胸水・腹水の有無などを、リアルタイムで知ることができます
心電図は心臓の動きを電気的に捉えて記録したものです
聴診器からの心音の異常による診断からさらに進んで、より科学的に心臓の状態を評価し、治療に結びつけることができます
内視鏡検査、CT、MRI検査など、飼い主様のご要望により、他院や専門の検査機関をご紹介いたしております