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白内障

白内障/長谷川動物病院
加齢による水晶体の変化 / 眼科先進医療研究会HPより

 

明けましておめでとうございます。

 

今年もまた、私の拙いお話にお付き合い頂けましたら嬉しいです。😊

 

今回は、白内障のお話です。

 

 

白内障は、眼球の中にある水晶体が白く濁って、進行性に視力が低下していく病気です。

 

犬ではしばしば、特に特定の犬種では若齢でも発症することがありますが、猫ではほとんど見られません。(猫では外傷性がほとんどです)

 

好発犬種は、プードル、柴犬、チワワ、M.シュナウザー、ダックス、ポメラニアン、アメリカンコッカーなどです。

 

ヒトでは、白内障が世界の失明原因の第一位だそうです。

 

ただし失明は、白内障を適切に治療せずに放置した結果で、続発症として緑内障網膜剥離眼底出血を発症させた場合です。

 

白内障は、その続発症(合併症)が怖いのです。

 

これは動物にも当てはまりますので、早めに発見して、適切に治療を行うことが推奨されます。

 

 

水晶体が白く濁る原因は、水晶体の中身のタンパク質の変性です。生卵が目玉焼きに変わるような感じです。(特に白身の部分)

 

水晶体は、透明なラグビーボールのような形をしていて、眼の中でカメラのレンズのような働きをしていています。

 

正確には、一番外側の角膜(2/3分担)と水晶体(1/3分担)の2枚で、レンズの役割(光の屈曲作用)を担っています。

 

外の物体からの光を集めて屈折させ、眼底にある網膜に倒立像を投影する役割を果たしています。

 

網膜にクリアな像を投影するために、毛様体の働きで水晶体は厚さを調節することによって、ピント合わせをしています。

 

網膜は、カメラで言うとフィルムにあたり、ここに投影された像が視神経を通ってに伝えられて、『ものを見る』ことができているのです。

 

正常では水晶体は透明な組織で光をよく通しますが、白内障になると白く濁ってしまうため、光が通過できなくなったり、光が乱反射して網膜にクリアな像を投影できなくなり、視力が低下します。

 

 

水晶体は、嚢(のう)と呼ばれる透明の袋の中に、水晶体細胞が幾層にも重なって整然と並んだ状態で形成されています。

 

水晶体細胞は、生まれてから死ぬまでずっと生産され続けます。

 

そんな水晶体細胞は、水晶体嚢の中で一定回数の分裂を繰り返し細胞がどんどん増えていきますが、外に排出されたり消えてなくなる機能はありません。

 

なので、歳をとると水晶体細胞の増加分、水晶体は大きくなり、内圧によって水晶体そのものが硬くなり、柔軟性が失われていきます。

 

水晶体が硬くなると、厚みを変えにくくなり、近くが見えにくくなります。(ピント合わせができなくなる)

 

さらに、水晶体が大きくなることで眼球内を流れる眼房水の循環が妨げられ、緑内障や水晶体脱臼の発症リスクが高まります。

 

水晶体が固くなる原因には、水晶体細胞内の水分が圧迫により徐々に失われていくことも挙げられます。

 

水晶体細胞は、分裂が終わると細胞質内の様々な器官が消失し、中身は水とタンパク質だけになります。

 

水晶体内のタンパク質はクリスタリンタンパクといい、水晶体細胞全体の3~4割を占めていて、それ以外の残りはほとんど水です。

 

クリスタリンタンパクのおかげで、水晶体で有害な紫外線がカットされる反面、これが白内障の原因にもなっています。

 

老化などいろいろな原因が、クリスタリンタンパクの持つ自己修復機能の劣化を引き起こし、クリスタリンタンパクの異常が修復されなくなると、水晶体が白く濁ってきて白内障となります。

 

 

◆加齢以外の原因

⚫︎生まれつき(先天性白内障)

⚫︎眼の怪我(外傷性)

⚫︎特定の薬(ステロイド剤、ケトコナゾールなど)の長期使用

⚫︎他の眼疾患(ぶどう膜炎、水晶体脱臼、緑内障、網膜変性など)

⚫︎放射線(X線)、直射日光、赤外線(熱)などの長期(慢性)暴露

⚫︎糖尿病やアトピー性皮膚炎などの全身疾患

⚫︎代謝性疾患(上皮小体機能低下症、腎不全、急性膵炎、ビタミンD中毒など)

⚫︎栄養不良

 

 

 

白内障は、白濁が周辺部から始まる場合と、中心部(核)から始まる場合がありますが、進行すると全体が濁るようになります。

 

両方の目が同時に発症する場合もありますが、片側の目が白内障になると、反対側の目もいずれ発症する可能性が高くなります。

 

以下の順番で進行してゆきますが、進行スピードは個体差が大きく、急激に進行して目が真っ白になったり、急性緑内障を発症する場合もあります。

 

初発白内障:水晶体の15%以下の混濁  点眼薬、サプリメントなどでの治療

未熟白内障:水晶体の15%以上の混濁  点眼薬での治療、手術の適応

成熟白内障:水晶体のほぼ全体が白濁  手術の適応

過熟白内障:水晶体嚢内のタンパク質が融解して嚢外に流出し、ぶどう膜炎や水晶体脱臼が起こります 

 

 

一般的に、小型犬は10歳以上、大型犬は6歳以上が、加齢性に白内障を発症する指標であり、その進行は緩やかです。

 

なので、たとえば10歳の小型犬に成熟白内障や過熟白内障が認められ、進行が急激な場合は、加齢以外の原因を疑う必要があります。

 

 

また現在、白内障はお薬で治すことができません。

 

ごく初期では、点眼薬で進行を遅らせることができる場合もありますが、濁った水晶体を元の透明な状態に戻すことは不可能です。

 

目玉焼きを生卵には戻せませんからね。

 

進行した白内障は、外科手術(眼内レンズ置換術)が推奨されています。

 

◆白内障に続発する眼疾患

⚫︎急性緑内障、水晶体脱臼

⚫︎水晶体融解性ぶどう膜炎

⚫︎網膜剥離、眼底出血

 

初発白内障や未熟白内障であっても、潜在的な水晶体融解性ぶどう膜炎を起こしているとされていますので、経過観察を行いながら、これらの発症の有無を確認します。

 

 

 

◆核硬化症

水晶体の中心にある水晶体核が加齢に伴って硬くなり、青みを帯びて白く見えるようになる老齢性の変化で、病気ではなく治療の必要もありません。

 

見た目がとても似ていて、初期の白内障との区別が難しいですが、白内障よりも多いです。

 

水晶体嚢の中でどんどん増える水晶体細胞が、中心に向かって凝集され水分を失って硬くなり、青白く見えるようになります。

 

核硬化症では、水晶体の透明度は低下しないため、視力を失うことはありませんし、痛みもありません。続発症の心配もあリません。

 

5~6歳位から、水晶体中心部に白い輪郭が認められるようになりますので、定期的な眼科検診をお勧めします。

 

 

その他、角膜炎角膜浮腫も『目が白くなる病気』ですが、白内障との区別は容易です。

 

 

 

 以上、動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。😊

 

 

 

 

 

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。