普段お話しする中で、飼い主さまと私たち病院スタッフとの間に、明らかな認識のずれを感じることがあります。
代表的なものは、(獣)医学用語についてですが、(獣)医学的な慣習やマナーに関することもあります。
そういう『認識のずれ』は、お互いの誤解のもとになり得ますので、早急な訂正や『すり合わせ』が求められます。
『毫釐の差は千里の謬り』ですからね。
今回は『紹介』にまつわるお話です。
動物病院では、基本的にすべての病気(と飼育動物)を診なければなりません。
けれど、獣医師も人ですから、得意不得意は必ずありますし、病院の設備の問題もあります。
そういう時に、検査設備の整った病院や、得意な先生を『紹介』することがあります。
飼い主さまが同意されると、『紹介状』を作成して飼い主さまにお渡しし、『紹介』する病院に連絡して来院日時をご予約いただくようにお話をします。
その前に、『紹介』先の先生に連絡をして了解を得て、大まかな経過をお伝えしておきます。
『紹介状』には、今までの検査結果や治療記録が記されています。
この一連の流れは、病院同士が連携して診療がスムーズに行われるように、動物病院の慣習の1つとなっています。
これは、人間の病院でも同様だと思います。
けれど、一般的に『紹介状』は有料であることから、返事を曖昧にして『紹介状』なしに、紹介先や他の病院へ行ってしまわれる方がいます。
この場合は『紹介状』のない『転院』なのですが、これまでの検査結果や治療記録がその病院に引き継がれませんので、また最初から検査や治療をやり直さなければならなくなります。
また、紹介先の病院が遠いという理由で、近くの病院を訊ねられることもあります。
紹介先以外は基本的に紹介できないことを伝え、ご自分でお調べくださいとお話します。
けれど、しつこく訊かれれば、その動物を診療されている病院や、市内の高度医療設備のある病院の名前を思いつくままいくつか、お答えすることもあります。
飼い主さまへ良かれと思ってのことなのですが。。
訊かれたことには答えたいと思うのですが、飼い主さまにもよりますね。
このような飼い主さまからしたら、普通に診察してもらうために別の病院に行く(転院)だけであり、『何の問題もない』のかもしれません。
診察をした獣医師の話を無視したとしても。
動物病院側からしたら、『マナー違反』なのですが、文章として明記されているわけでもありませんし、転院は自由ですから、飼い主さまを止めることもできません。
禁止事項でなく『お願い』ですから。(なんだかコロナの頃を思い出しますね)
動物病院の慣習なんて、飼い主さまは知らないことですからね。
あらかじめ、その病院に飼い主さまから連絡をしていただければまだいいのですが、いきなり来院される方がいらっしゃいます。
場合によっては、たまたまその日は休診日だったり、診療時間外だったり、あるいは手術中だったりするかもしれません。
また、診療対象外の動物だったり、対応できない症例だったり、タイミングなどあいにく都合が悪い場合もあるでしょう。
動物病院としては、その日の予定がすでに埋まっていたりして、『紹介』の場合に限らず、連絡なく急に来られると困惑する場合があります。
なので、来院の前にお電話で問い合わせていただきたいのです。(初診の方は特にです)
また、『紹介』で来院の際には、事前の飼い主さまからの連絡はもちろんですが、その前に診察をした病院側(獣医師)から連絡をいただきたいのです。
けれど、飼い主さまが意思を曖昧にされたままでは、病院への連絡などできませんし、紹介状も書けません。
飼い主さま側の問題なのですが、責められるのは先に診察をした獣医師です。
私は以前、飼い主さまに訊かれて答えた複数の病院の内の1つから、クレームを受けたことがあります。
その飼い主さまは、連絡なく来院された上、私から『紹介』されたと、話されたそうです。
この場合は厳密には『転院』で、私は『紹介』したつもりはなかったのですが。
その時は、私の紹介先の病院が遠いということで、市内の高度医療設備のある動物病院を訊かれ、仕方なく複数の病院名を答えたのですが、クレームを受けて反省しました。
私としては、訊かれたことに『答えた:answer or reply 』という認識ですが、獣医師の私が動物病院の名前を言ってしまうと、『紹介された:referral or recommend 』と認識される飼い主さまがいらっしゃるようです。
答えてしまう私が確かに悪いです。いくらしつこく訊かれても、そこは「紹介先の病院以外は、ご自分で調べてください」と突き放すべきでした。
ただそうすると、Google の口コミに「対応が不親切で冷たい」って、書かれてしまいそうですけれど。😓 難しいです。
『李下に冠を正さず 瓜田に履を納れず』『口は災いの元』わかってはいるのですが。
丁寧に説明をするしかありませんね。
感じ方や価値観は人それぞれですし、動物病院の慣習など、一般の方々が知るはずもありません。
けれど、動物病院を来院される方々に知っておいていただきたいことや、守っていただきたいルールは、これからも積極的にお伝えしたいと思っています。
お互いの誤解や思い込みなどなく、スムーズな診療ができるように、飼い主さまにも私たち病院スタッフにも、そして何より動物たちのためにも、必要なことだからです。
以上、動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。😊
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。