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犬と猫のてんかん分類

犬と猫のてんかん分類 / 長谷川動物病院
  犬と猫の発作型によるてんかん分類 / 長谷川動物病院

 

てんかん発作は、脳の神経細胞(ニューロン)が突然激しく(電気的に)興奮して起こります。

 

規則正しいリズムで流れていた電気が突然ショートし、まるで雷が走ったようになる、と例えられます。

 

 

てんかんは、『24時間以上の間隔をあけて、2回以上の(非誘発性の)てんかん発作が認められる慢性の脳の病気』 と定義されます。

 

けいれんする場合としない場合があり、発作の起きる部位も、体の一部分だけから全身に及ぶものまで様々です。

 

同じ患者さんに起きる発作のパターンは毎回ほぼ一定していて、同様の発作が繰り返されるという特徴があります。(広がり重症化する可能性はありますが)

 

けいれん発作時は、見ている飼い主さまは辛いでしょうが、本人(犬猫)は苦しみを感じていないと言われています。(倦怠感はあるかもしれませんが)

 

 

てんかんの動物は、発作間欠期 (普段の状態で長い)  →  ( 前駆徴候:発作ではない (数時間~数日) )  →  発作 (一瞬〜数分)  →  (  発作後徴候:発作ではない (数分〜数時間) )  → 発作間欠期 というサイクルを繰り返します。

 

前駆徴候と発作後徴候は、ある子とない子がいます。

 

てんかんは通常不安そうにしている、落ち着かない、擦り寄ってくる、どこかに隠れて怯えている、などの後に)突然、発作が始まって終わり、(しばらくボーっとする、目が見えなくなる、無意味に動き回るなど)そして元に戻る、そんな感じです。

 

 

それに対して、脳以外の原因で起きる発作は、『反応性発作(または誘発性発作)』と言い、『てんかん発作』とは区別されます。

 

各種中毒、低酸素、低血糖、低カルシウム、チアミン欠乏症、高血圧、肝性脳症、尿毒症、赤血球増多症、脱水、電解質異常、高リポ蛋白血症(Mシュナウザー)、内分泌疾患、心疾患による失神、神経原性(ナルコレプシー、前庭疾患、重症筋無力症)、行動異常、などが原因で起きる発作です。

 

 

さらに、脳が原因で起きるてんかん発作でも、何かが引き金になって起きる発作は『反射性発作』と言います。

 

『動物病院やトリミングに行くと必ず発作が起こる』とか、『玄関のチャイムが鳴ると必ず発作が起こる』とか、『猫聴覚原性反射発作』とか。

 

ややこしいですね。脳が原因かどうかは、MRI検査や脳脊髄液検査、脳波検査などをしなければ分かりません。

 

一般の動物病院では、飼い主さまからのお話と、けいれんを起こす他の病気の除外診断を行って、最終的に『てんかん』という診断に至ります。

 

一般的にてんかんは治らない病気ですが、構造的てんかんの一部は原因疾患の治癒によって発作が起こらなくなる場合があります。(ただしてんかん発作が後遺症として残る場合もあります)

 

症状(徴候)によるてんかんの分類は、人間では治療薬の決定を行う指標となります。(動物では選択の余地があまりありませんが💦)

 

てんかん分類を正しく行うことで、てんかん重積の時の症状を予測し、その時に備えることができます。

 

 

てんかんの(原因による)分類 ◆

1)特発性てんかん:脳波以外の検査では、明らかな異常が見つからない

2)構造的てんかん:MRI検査、脳脊髄液検査、抗体検査などで、脳に明らかな異常が認められる

 

ちなみに、てんかんは突然起こりますが、突発性(とっぱつせい)ではなく、特発性(とくはつせい:原因不明)です。お間違い無く。😉

 

1)特発性てんかん

①遺伝性、②おそらく遺伝性、③原因不明の(特発性)てんかん、に分類されます。

 

原因遺伝子が特定されている遺伝性てんかん(3犬種)や、遺伝子は同定されていないものの、家系図解析から遺伝性が疑われる犬種が多数存在します。

 

猫の遺伝性てんかんは見つかっていませんが、家系図解析から遺伝性が疑われるケースが確認されています。

 

約6~7割のてんかん犬と、約5~6割のてんかん猫が、③に分類されます 。

 

ただし、遺伝子検査は限られた研究機関でしか行えませんし、遺伝性てんかんの犬種のてんかんが全て遺伝性とも限りません。

 

 

2)構造的てんかん(以前の症候性てんかん)

脳血管障害、感染性・非感染性脳炎、外傷性、奇形性、腫瘍性、変性性疾患(ラフォラ病、ライソゾーム病、認知症など)などによる、脳の明らかな異常が原因で引き起こされるてんかん発作で、血液検査、画像診断、脳脊髄液検査、DNA検査、病理検査などによって確認されます。

 

脳炎は感染性(細菌、真菌、犬ジステンパー、FIPなど)と非感染性(起源不明の犬髄膜脳脊髄炎MUO、猫免疫介在性脳炎など)に分類されます。

 

 

 

 

てんかんの(発作症状による)分類 ◆

1)焦点発作(部分発作)

脳のある一部分(左右どちらか一方)で起こる発作で、症状(徴候:sign)も部分的です。

 

脳の発作を起こす部位を『焦点』といい、その場所によって、意識がある場合(単純部分発作)と、ない場合(複雑部分発作)があります。

 

時間の経過とともに焦点が周囲の脳組織に広がることがあり、全般発作に進展する場合もあります。

 

この場合、全般発作が目立つためにその前にあった焦点発作が見逃されてしまい、焦点発作に分類されるべき発作が全般発作と診断されているケースがあるようです。

 

①運動性発作:けいれん性

体の一部(片側の顔や手足)にけいれんなどの動きのある症状を示すもの 

 

②自律神経性発作:非けいれん性

自律神経機能を司る場所が発作の焦点であって、瞳孔散大、流涎、腹痛、嘔吐、下痢、排尿、排便などの症状を示すもの

 

③行動性発作:非けいれん性

人間の『感覚性発作』に該当する、(動物では知り得ない)幻聴や幻覚のせいと思われる異常行動を示すもので、一見てんかん発作には見えないもの 

 

 

2)全般発作

発作の始まりから、脳全体が一斉に電気的に興奮して発作を起こします。

 

通常は、全身がけいれんし意識も最初からなくなりますが、一瞬から2~3分で終わります。(けいれんしないものもあります)

 

強直間代性発作は、一般的に認識されている典型的な『てんかん発作』で、睡眠中や、入眠時、起きがけに起こりやすいです。

 

突然口を大きく開け、全身が突っ張るように力み、小刻みに震え(ここまで強直性発作)、その後徐々に口がガクガク手足がバタバタと犬掻きをするように大きく動き(ここまで間代性発作)、だんだん弱くなって終わり、通常、流涎、排尿、排便などを伴います。

 

非けいれん性の発作は、飼い主さまに気づかれにくいので、獣医療ではとても稀です。

 

①けいれん性全般発作

a. 強直間代性発作(大発作):強直性発作+間代性発作

 

b. 強直性発作:口を大きく開け、全身に力が入り、手足をまっすぐに伸ばし小刻みにプルプル震える

 

c. 間代性発作:全身の力が抜け、口や手足をガクガク、バタバタ動かす発作

 

d. ミオクロニー発作:瞬間的に電気が走ったように全身または手足などの一部分の筋肉がビクッと収縮して(両側性、左右対称性)、よろけたり転んだりするが、意識はある 寝起きや入眠時に起きやすい傾向

 

 

②非けいれん性全般発作

a. 脱力発作:瞬間的に全身の筋肉の力が抜け、突然崩れるようにして倒れるが、すぐに回復する

 

b. 欠伸発作(小発作):意識が一瞬〜数秒間なくなり、フリーズ状態となるがすぐに回復する(気付くのは難しい)

 

 

 

 

以上のように、てんかんは、『原因』と『発作症状』によって、大きく4つに分類されます。

 

動物の場合は、自ら症状を訴えることができませんので、周りの人間(飼い主さまや獣医師)が目にしたこと(徴候)が全てです。

 

実際、けいれん性発作以外は分かりにくく、たとえ飼い主さまが気づいていたとしても、それが異常とは認識されずに放置されているのが実情です。

 

けいれんしなくても、意識不明のてんかん重積(非けいれん性発作重積)にはなり得ます。

 

また発作を繰り返すことによって、発作がより起こりやすくなり、確実に脳が損傷され、早期に認知機能不全症になると言われています。

 

日頃から違和感を覚える行動はないかどうか、動物たちをよく見ていてください。

 

そして、何か気になる症状が見られましたら、獣医師にご相談ください。

 

 

 

 以上、動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。😊

 

 

 

 

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。