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蛋白漏出性腸症

 

大分サボってしまいました。申し訳ありません。😅

 

これから倍返しで頑張りたいと思います。今年最初のブログです。

 

今回は、低蛋白血症とその原因の1つ、蛋白漏出性腸症のお話をします。

 

 

低蛋白血症とは、血液検査で血液中の TP(総蛋白)ALB(アルブミン)Bil(ビリルビン)などのタンパク質が低下している状態です。

 

そのうち代表的なアルブミンは、血管内に水分を引きつけ、脂肪酸やホルモンや薬物と結合して運搬する働きをしています。

 

アルブミンが重度に低下すると、血管から血管外に水分が漏れ出てしまいます。

 

そうなると、血管の中が脱水状態になって血液がドロドロになり、さらに血液凝固系・線溶系因子や凝固阻止因子の影響によって、血栓(血の塊)ができやすい状態になります。

 

体調が急変したり、突然死の原因になったりするので、血栓はとても危険です。

 

 

さらにタンパク質は、体を作る重要な栄養素であり材料ですから、低蛋白血症では、病気の回復が遅れたり、傷の治りが遅くなったり(創傷治癒遅延)します。

 

なので、術前検査で低蛋白血症が見つかると、長期間吸収されない縫合糸や非吸収性縫合糸に変更する場合があります。

 

縫い合わせた組織同士がくっつく前に、糸が溶けてしまったら大変ですからね。🙀

 

また、お薬の効き方の変化(強く効くor効果が弱くなる)が生じることがあります。

 

蛋白漏出性腸症の他にも肝臓の機能障害など、低蛋白血症となる原因は複数存在しますので、鑑別のための検査が必要となります。

 

 

 

蛋白漏出性腸症は犬も猫もなりますが、主な基礎疾患である腸リンパ管拡張症ヨークシャーテリアが好発犬種とされています。

 

蛋白漏出性腸症では、消化管(胃、腸)粘膜の血管内から血液中の蛋白(アルブミンなど)が、糞便が存在する消化管内腔(体外)へ漏れ出てしまいます。

 

また、消化管粘膜には血管以外にも多くのリンパ管が存在していて、リンパ管内を流れるリンパ液にもタンパク質は含まれています。

 

静脈血流の異常や肝硬変などによって、リンパ液の流れが滞ったり堰き止められたりすると、リンパ液ごとタンパク質が消化管内に漏れ出す場合もあります。

 

蛋白漏出性腸症は、その原因が複数存在しますので、特定の疾患名ではなく『症候群』として取り扱われます。

 

実は、正常でもアルブミンは少量ずつ胃腸管内に排出され、また再吸収され、それを繰り返しています。(腸肝循環)

 

けれど蛋白漏出性腸症では、肝臓のアルブミンを合成する能力を超えて消化管内に大量に漏出するため、低蛋白(低アルブミン)血症となります。

 

栄養不良のため体重減少が顕著で、ボーっと無気力になっていることが多いです。

 

アルブミン以外でも、グロブリン、トランスフェリン、セルロプラスミン、カルシウムリンパ球脂質などが漏出します。

 

免疫グロブリン(IgG)やリンパ球の減少によって続発性の免疫不全状態となることもあり、また抗体産生能の低下が認められる場合もあります。

 

血液中の白血球数が正常な場合でも、リンパ球数は顕著に減少していて、その時に漏出するリンパ球は主にTリンパ球です。

 

さらにコレステロールの漏出に加えて、脂肪の消化吸収障害(脂肪便)を伴います。

 

 

原因)

①消化管疾患(腸リンパ管拡張症、炎症性腸疾患:IBD、腸管型リンパ腫、各種感染症など)

消化管粘膜にびらんや潰瘍ができるとそこから蛋白が漏れ出します。

②(重度右)心不全

③アレルギー性胃腸炎(食物アレルギー)

④膠原病(全身性エリテマトーデス)   など

 

 

病理組織学的には、

①腸リンパ管の異常(リンパ管拡張症、腸管型リンパ腫など)

②毛細血管透過性の亢進(アレルギー性胃腸症、膠原病など)

③胃腸粘膜上皮の異常(炎症、潰瘍、腫瘍)

④局所線維素溶解反応の亢進(炎症反応性ショック、外科手術、アレルギー反応、中毒など)  

   

などの反応が、単独あるいは同時に起きるとされ、一部は自己免疫疾患であると考えられています。

 

 

 

症状)

慢性(小腸性)下痢、嘔吐、体重減少、食欲不振、腹痛、むくみ、脱水、貧血、無気力、呼吸困難などですが、下痢が見られない場合もあります

 

1)消化器症状

下痢、嘔吐、食欲不振、腹痛など、基礎疾患によって症状が異なります。

リンパ管拡張症では、脂肪の吸収障害による脂肪便や下痢が多く認められます。

 

2)浮腫(むくみ)

手脚などの末梢性浮腫が多いですが、重症化すると胸水・腹水など全身性浮腫を呈する場合もあります。

非対称性の浮腫や、乳び性の胸水・腹水が認められる場合は、リンパ系の異常が疑われます。

 

3)低カルシウム血症

カルシウムの消化管内漏出、脂肪の吸収障害や低アルブミン血症によるもので、テタニー症状(けいれん)を引き起こすこともあります。

 

4)血栓形成

重度の低蛋白血症やうっ血性心不全では、血栓が形成されやすくなります。

 

 

 

治療)

食事療法+原因疾患に対する治療、対症療法など。

 

 

 

 

 以上、動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。😊

 

 

 

 

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。