リンパ腫は、犬猫では診察する機会の多い、悪性腫瘍です。
名前は良性っぽいですが、わざわざ悪性をつけなくても、全て悪性腫瘍です。
詳しくは、こちらをお読みください。
身体中のリンパ節が大きく腫大したり、リンパ節以外の組織(目、鼻、皮膚、腎臓、肝臓、脾臓など)に腫瘍を形成したりします。
腫瘍組織に注射針を刺して組織を吸引し、顕微鏡で細胞を調べる針吸引生検検査によって、ほぼ診断が可能です。
けれど、リンパ腫以外にもリンパ節が腫脹する、反応性過形成である可能性もあります。
また、小細胞性(高分化型)リンパ腫の場合は、正常のリンパ球との区別が難しいので、病理診断が必要になります。
診断に苦慮する時に行われる検査の1つが、クローナリティ解析です。
この検査では、本当にリンパ腫かどうか、リンパ腫であるならばB細胞性かT細胞性か(それ以外か)の結果が得られます。
今回は、リンパ腫の動物が来院されたときに行われる検査のお話です。
(ただし、これら全ての検査が必要なわけではありません)
①問診、視診、触診、一般状態の確認
②針吸引検査
③レントゲン検査(+超音波検査)
④血液検査
⑤クローナリティ解析(B/T分類)
⑥MDR1遺伝子変異検査
⑦CT・MRI検査
①~④までは、その子の現在の一般状態を知るための検査です。
腫瘍のできる子は高齢動物が多いので、併発疾患を知るための検査でもあります。
レントゲン検査では、触診で確認することができない胸腔内や腹腔内の、リンパ節や内臓の腫大の有無を確認します。
超音波検査では、さらに内臓内部や腫瘍内部の観察と大きさの測定を行います。
それらの検査結果をもとに、治療の方法について話し合われます。
リンパ腫の治療は、ほぼ抗がん剤による化学療法が選択されます。
なので、飼い主のご家族全員の治療に対するお考え、その子の体力、持病の有無、抗がん剤使用にあたっての制限因子の有無、予測される治療効果などが問題となります。
抗がん剤による治療効果は、どの抗がん剤をどのように使用するかによって違ってきます。費用も違ってきます。
またリンパ腫の種類によっても、治療効果は大きく異なります。
その予測に貢献するのが、クローナリティ解析と、MDR1遺伝子変異検査です。
MDR1遺伝子変異検査について、詳しくは、こちらをお読みください。
リンパ腫は、多中心型や消化器型といった解剖学的分類の他に、細胞の形態や、腫瘍リンパ球の種類によって分類されます。
針吸引生検の時の腫瘍リンパ球の形態から、ある程度の予測は可能ではありますが、確実ではありません。
クローナリティ解析によって、そのリンパ腫がB細胞性なのか、T細胞性なのかがわかります。
犬のB細胞性リンパ腫は、T細胞性リンパ腫に比べて、抗がん剤への反応が良いと言われています。(経験的にもそうです)
ただし、異常が検出されなくても、NK細胞性などの、Non-B/Non-Tタイプのリンパ腫や、現在の技術では検出できない稀なリンパ腫である可能性は否定できません。
また、リンパ腫とリンパ性白血病の判別や、縦隔型リンパ腫と胸腺腫の鑑別、リンパ腫と形質細胞腫との鑑別には適しません。
さらに、Bリンパ球では体細胞突然変異が起こるために、異常(モノクローナルな増殖)が検出されない場合も、少数ながら存在します。
このように、100%正確な検査ではありませんので(犬で感度94.2%、特異度94.1%、猫はそれ以下)、細胞診や病理診断の結果と異なる結果が得られた時には、総合的な判断が必要となります。
また少数ながら、腫瘍以外でも重度な感染症などの時に異常が検出されたり、反対に発病初期などは、リンパ腫やリンパ性白血病であっても異常を検出できない場合もあります。
なので、この検査だけで診断することなく、細胞診や病理検査と合わせて診断することが推奨されます。
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。