ブルドッグは、18世紀頃英国で、雄牛(ブル)と犬を戦わせる牛イジメ(bullbaiting)という見世物が流行していた時に、牛に対抗できる犬として作り出された品種です。
その後、1835年にイギリスで動物虐待法が成立すると、ブルドッグは獰猛で攻撃的な性格が取り除かれて、今のような穏やかでおとなしい愛玩犬になりました。😊(ピットブルなど、攻撃的な性格が残っている犬種はありますが。。)
けれど、人が犬本来の形を歪めてしまった結果、全体のバランスとして頭が非常に大きくなり、自然分娩はほぼ不可能です。
ほとんどの子が、帝王切開で産まれているはずです。
他の短頭種犬や、場合によっては猫でも程度の差はあるものの、同じような傾向が認められます。
弛んだ皮膚は、シワの間を清潔に保たなければ皮膚炎になります。
鼻が短いために体温調節がうまくできず、熱中症になりやすいです。
本来は異常な下顎前突(アンダーショット)がこの子たちでは正常で、程度の差はありますが正常咬合でない子は噛む力は弱いです。
また歯が生えるスペース、特に上顎の部分が狭いために、隣同士の歯が重なり合って歯周病になりやすいです。
歯並びが悪いため、噛むたびに上下の歯と歯が接触したり、歯と舌や歯肉などの軟部組織が接触することによって損傷していることがあり、重要でない歯の選択的な抜歯が必要になることがあります。
短頭種では、眼窩が浅く目が飛び出ていて、上下の瞼の閉鎖が不十分で、瞬きの回数が少ない傾向にあるために、目の病気、特に角膜の外傷が多く、点眼治療や外科治療が必要になることがあります。
具体的には、色素性角膜炎、角膜潰瘍、外傷性眼球突出、睫毛異常、涙器疾患などです。
それぞれの原因を除去し、症状を改善するための治療が必要です。
軟部組織はむしろ過形成となり、大きい鼻翼が空気を吸い込む外鼻孔を狭めていたり、軟口蓋が過長となって、呼吸困難の原因となっていることがあります。
さらに、口呼吸による扁桃の腫大や咽喉頭部の浮腫によって、気道がより狭くなり、食物を飲み込む時に正常な換気ができないと、吸引性肺炎を引き起こすことがあります。
呼吸困難の症状の認められる子には、2次的な変化が起こる前の、早期の外科手術が推奨されています。
外鼻孔形成術、軟口蓋切除術、喉頭小嚢切除術、扁桃切除術、片側披裂軟骨外側固定術などが実施されています。
特に推奨されているのは、外鼻孔形成術と軟口蓋切除術を、できるだけ早期に実施することです。
症状のある子は、避妊・去勢手術の時に合わせて行うことが推奨されます。
外鼻孔楔形切除術:鼻の穴の出口を塞ぐ鼻翼の一部を切除することで空気の通り道を広くします。
軟口蓋切除術:軟口蓋の長すぎて気道を塞いでいる部分を切除して気道を広げます
併発する消化器症状を放置しないことも大切です。
唾液過多、胃液の逆流、嘔吐などによっても、咽頭部に慢性的な炎症が引き起こされて、呼吸器症状をさらに悪化させます。
逆に、慢性的な呼吸困難は、食道への胃液の逆流を誘発すると考えられています。
さらに短頭種犬では、食道裂孔ヘルニアや幽門狭窄などの先天的な奇形や、特発性食道拡張も報告されていて、それらが消化器症状の原因の1つになっていると考えられています。
外科的治療と内科的治療の併用によって、呼吸器症状と消化器症状が同時に改善されることが期待できます。
消化器症状:制酸薬、消化管運動改善薬
呼吸器症状:抗炎症薬(ステロイド剤)、鎮静剤、去痰薬
呼吸困難の緊急時には、酸素療法、抗炎症薬、必要に応じて鎮静剤が用いられます。
🌸併せてお読みください:マオくんのつぶやき(ぼやき?)/鼻ぺちゃのワンコ
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。