神経学的検査は、神経症状を示す動物に対して行われる検査です。
本当に神経疾患なのか、神経疾患ならば、その病変部位の特定を行うことが目的です。
一般的には、視診、触診、姿勢反応、脊髄反射検査、脳神経検査、排尿機能検査、感覚検査が行われます。
いずれの検査も、動物がリラックスした状態で行うことが重要です。(なのでなかなか難しいのです💦)
問診と同時に視診では、意識レベル(大脳、(間脳)、脳幹)、意識状態(正常、傾眠、混迷、昏睡)、じっとしている時の姿勢や歩き方をみます。
さらに、両目の瞳孔の大きさの対称性、斜視、第三眼瞼(瞬膜)の異常、斜頸、眼振の有無について確認します。
触診では、体のどこかに痛むところがあるか、筋肉の萎縮によって顔面や体が左右不対称になっていないかをみます。
姿勢反応は、起立状態を保つための反応を利用して、神経系の機能評価を行います。
①固有位置感覚(プロプリオセプション)、②踏み直り反応、③跳び直り反応、④立ち直り反応、⑤手押し車反応、⑥姿勢性伸筋突伸反応について、それぞれ正常に行えるかどうかを、0:消失、1:低下、2:正常として評価します。
脊髄反射は、ある刺激に対して、大脳皮質まで行かずに、途中の脊髄にある反射中枢を介して、短時間で起きる体の反応のことです。
脊髄反射は、反射弓=①感覚神経⎯⎯⎯②脊髄分節⎯⎯⎯③運動神経(LMN)から構成されます。
評価は、0:消失、1:低下、2:正常、3:亢進、4:クローヌス(1回の刺激に対して筋肉の収縮と弛緩が交互に何度も起きる)。
脊髄反射が低下または消失している場合は、該当する脊髄分節や神経に異常があると考えられます。
また、脊髄反射が正常~亢進していて、その肢の運動機能や姿勢反応が異常ならば、病変は反射弓よりも頭側中枢(UMN)にあります。
脳神経検査は12の脳神経(脳から直接出ている末梢神経)の機能を評価する検査です。
各検査項目ごとに関与する脳神経が決まっていますので、検査に異常が認められれば、該当する脳神経の異常が疑われます。
しかしそれぞれの脳神経は、末梢組織と脳(大脳、(間脳)、脳幹)をつなぐ有線コードのようなものなので、末梢側に異常があれば、脳神経検査が異常となる場合があります!
また、脳神経検査は脳神経の機能を評価する検査なので、頭蓋内に異常が存在しても、脳神経に影響していなければ検査は正常となり得ます!
頭蓋内の異常病変はMRIなどの画像検査で検出されますが、神経学的検査は病変部の大まかな場所の特定を目的に行われる検査です。
具体的には、例えば前庭疾患ですと、前庭疾患は原因の存在場所によって、中枢性と末梢性に大別されます。
中枢性の前庭疾患では、固有位置感覚(プロプリオセプション)などの姿勢反応に異常が見られたり、発作や視覚障害などの大脳や間脳、他の脳幹症状を伴うことがあります。
けれど、中枢性の前庭疾患でも前庭症状のみの場合には、頭部を変位させることによって眼振が誘発されたり、眼振の方向が変化したりすることがあります。
安静時の眼振の方向だけで、末梢性か中枢性かの判断はできないのです。
ちなみに、前庭疾患は色々な原因で平衡感覚を失ってしまう病気全般の、ざっくりとした呼び名です。
内耳にある前庭、三半規管、そこから情報が伝わる前庭神経、延髄、小脳のどこかが障害されて起こります。
前庭疾患は末梢性と中枢性に分けられ、耳の中(内耳)や耳と小脳や延髄をつなぐ前庭神経に異常があるものを末梢性前庭疾患、延髄や小脳に異常があるものを中枢性前庭疾患と呼びます。
症状は突然現れることがあり、頭を一方向に傾げる(斜頸)、まっすぐ歩けない、一方向にぐるぐる回転する(旋回運動)、眼球が周期的に揺れる、などの症状がみられます。
さらに末梢性の場合には、中耳炎や内耳炎から顔面神経麻痺や、ホルネル症候群を併発することがあります。
じっとしていても目が回って、乗り物酔いのような状態になり、嘔吐や食欲不振になることもあります。
発症直後の重度の症状は、徐々に改善されることが多いですが、斜頸が後遺症として残ったり、再発を繰り返す場合もあります。
治療は、それぞれの原因や症状に対する治療が行われます。
これからの季節に悪化することが多い外耳炎を早めに治療することで、その先の中耳や内耳まで炎症が波及し、色々な病気を引き起こすことを予防できます。
頭を振ったり、耳を掻いたり、臭い悪臭がしませんか?
外耳炎は万病の元! 日頃からこまめな耳のチェックを心がけましょう。
※間脳は、人では大脳に、獣医学では脳幹に含まれます。
獣医学では、 脳:大脳、脳幹、小脳
脳幹:中脳、橋、延髄、間脳
中枢神経:脳、脊髄
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。