耳血腫とは、耳介(頭から外に出ている部分)の軟骨と皮膚の間に、血液や血液を含んだ漿液がたまり、パンパンに腫れ上がってしまう病気です。
柔道やレスリングの選手にも時々見られるように、人間もなります。
人間の場合は、激しい練習によって耳を何度も強くぶつけたり、擦り付けるせいだと思われます。
これに対して犬や猫では、耳を激しく痒がり、頭を振ったり後ろ足で掻くことによって、耳介に出血が起き、それが皮下に溜まるのです。
特に、コッカーやバセットハウンドのような、垂れ耳の子は要注意です。
原因)
1)耳ダニの寄生やアレルギー性、感染症による外耳炎
2)中耳炎やポリープ
垂れ耳だけでなく、立ち耳でもなります。猫もなります。
ですから、耳を痒がっていたら、『そのうち治るだろう』と放置せずに、早めに治療を開始してください。
お願いいたします。
耳血腫は外耳炎の子が全てなるわけではなく、いくつかの基礎疾患が発症要因として指摘されています。
発症要因)
1)何らかのアレルギー
2)自己免疫性疾患
3)血液の凝固異常
4)副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
耳血腫の溜まった液体は、抜いても適切な処置をしなければ、またすぐに溜まります。
ですので、治療は再度溜まらせないような処置が必要です。
それと同時に、直接の原因である外耳炎(や中耳炎)の治療が行われます。
耳ダニが確認された時には、まず耳ダニの駆除を行います。
耳ダニは、犬、猫、うさぎ、フェレット、ハムスターなどにも感染ってしまいまいますので、一緒に飼育されている動物の一斉駆除が必要です。
耳血腫の治療にほぼ欠かせないステロイド剤を使用すると、耳ダニや感染症の治療に支障が出る可能性があります。
ですから、順番としてはまず耳ダニや感染症の治療を優先させて、その後に耳血腫の治療を本格的に行います。
それまでは耳血腫に対して、すぐに塞がらないような切開や穴を開け、排液を促します。
これには、排液を吸わせたガーゼの頻繁な交換が必要ですので、毎日通院していただくか、ご自宅で交換していただく必要があります。
また耳を掻かせないためと、ガーゼを取られないために、エリザベスカラーの装着が必要です。
無治療の場合や、長く放置された耳血腫を治療した時には、耳介が固く肥厚し、歪んで変形して外耳道が狭まり、慢性の外耳炎に移行するかもしれません。
ですので耳血腫の治療の目標は、耳介の変形と(同じ耳や反対側の耳の)再発を防ぐことです。
治療)
1)内科治療
2)外科治療
耳介の軟骨の変性・壊死に免疫が関与しているという報告があり、治療には主に、消炎作用や免疫抑制作用を持つステロイド剤が使用されます。
使用されるのは4群(Medium:中程度)や5群(Weak:弱い)に属する弱いステロイドですが、副作用の心配が全くないわけではありません。
特に、血液検査で血糖値が高めの子には、ステロイド剤の使用によって糖尿病を発症する可能性がゼロではないことをお話ししています。
そのほかの考えられる副作用についてもお話しして、その上で治療法を選択していただきます。
ステロイド剤以外には、非ステロイド性消炎鎮痛剤や、免疫抑制剤、インターフェロンなどで治療が行われます。
外科手術は、切開して排液・洗浄後1㎝くらいの間隔で、液体が溜まる隙間を作らないように、雑巾を縫うように、縫合糸で縫合する手術を行います。
ステロイド剤を使用しないときには、外科手術によっても耳介の多少の変形は避けられないと思われます。
これらのことをお話しした上で治療法を選択していただいています。
一度変形した耳は元には戻りません。
早めの治療をお勧めいたします。
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。